2006年11月07日
048.解雇のルール
■改正の趣旨
現在、一部では、解雇は会社の自由であると思っている使用者や、何らかの理由があれば常に解雇という厳しい措置がとれると考える使用者も多いことから、合理的な理由のない解雇や行き過ぎた解雇も見られます。
しかし、一方では、日本でいったん社員を雇用すると実質的に解雇はできないものと考える使用者もいることから、解雇に関するトラブルが増えています。
このような解雇に関するトラブルが増大している現状や解雇が社員に与える影響を考え、解雇に際してのトラブル防止とその解決を目的として、労働基準法に最高裁判所で確立している「解雇権濫用法理」を平成16年1月1日から明記することになりました。
■解雇権濫用法理とは
「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」と昭和50年の最高裁判決(日本食塩製造事件)において初めて示されたものであり、その後の判例でも踏襲され、確立されているものです。
■解雇ルールの明文化
解雇についての事前の予測可能性を高めるために、就業規則の中に平成16年1月1日から「解雇の事由」を記載しなければいけなくなりました。そして、雇用契約の締結に際し、使用者が書面の交付により明示すべき労働条件のうち「退職に関する事項」に「解雇の事由」を記載しなければいけなくなりました。
また、解雇される社員は、解雇前においても、使用者に対し、解雇の事由について証明書を請求することができるようになりました。
これにより、解雇の理由が書面に記載されるため、客観的に合理的でないと認められない場合、不当解雇と判断されます。
■その他の留意点
今回の解雇に関する法改正は、労働者保護が目的として見られていますが、反面、就業規則や採用時の労働条件明示文書で「退職に関する事項」について明確にすれば、使用者も解雇に関するトラブルを起こすことなく、解雇手続きをスムーズに処理しやすくなりました。
そのためには、この法改正をしっかり理解し、解雇に関する就業規則・雇用契約書の見直しを行い、社員に再度周知させてください。
しかし、「就業規則を見直しても、社員に周知させていない」場合や「変更後の就業規則を労働基準監督署に提出してない」場合は、就業規則の見直しを実施したとはいえません。
しっかりと決められた手順で就業規則の変更・雇用契約の見直しを行い、未然に防げるトラブルは避けてください。
就業規則の変更を行う際や不明点がありましたら気軽にご相談ください。
2006年11月01日
040.天災事変等による解雇予告除外認定基準
愛知県西枇杷島町のA社は、去る9月11日の集中豪雨により工場敷地内が浸水し、通常の業務に使用している機器の大半が故障してしまいました。A社社長には後継者がいないため、以前から廃業を考えていました。従って、今回の水害がそのいい機会だと思い、労働基準監督署から解雇予告の除外認定を受けようとしました。
1.解雇予告および解雇予告の除外について
労働基準法第20条では、解雇される労働者の就職活動期間における収入の確保という観点から、事業主が労働者を解雇しようとするときは少なくとも30日前にその予告をしなければならず、また30日前に予告をしない場合は平均賃金の30日分を支払わなければならないとしています。これが「解雇予告」と言われるものです。
しかし、「天災事変その他やむを得ない事由のため事業の継続が不可能となった場合」や「労働者の責に帰すべき場合」に、労働基準監督署から解雇予告の除外認定を受けた場合、平均賃金の30日分を支払うことなく即時解雇することができます。これを「解雇予告の除外」と言い、同じく同条で定められています。
2.天災事変等による解雇予告除外認定基準(行政解釈)
上記の「天災事変・・・・場合」に認定されるためには、天災事変や天災事変に準ずる程度の不可抗力かつ突発的な出来事により、通常採るべき必要な措置を施しても手の打ちようがない状況にあることを第一の要件とします。
(例)
・事業場が火災により焼失した場合(ただし事業主の
故意又は重大な過失に基づく場合を除く)
・震災に伴う工場、事業場の倒壊、類焼等により事業
の継続が不可能となった場合
従って、次のような場合はこれに該当しません。
・事業主が経済法令違反のため強制収容され、又は購
入した諸機械、資材等が没収された場合
・税金の滞納処分をうけ事業廃止に至った場合
・事業経営上の見通しを誤り、資材入手難、金融難に 陥った場合
・従来の取引先が休業状態となり、発注品がないため に事業が金融難に陥った場合
第二の要件としては、事業の全部又は大部分の継続が不可能であることです。従って、事業がなおその主たる部分を保持して継続することができる場合や、一時的に操業中止をしなければならなくなったが、事業の現況、資材、資金の見通し等から全労働者を解雇する必要に迫られず、近く再開復旧の見込みが明らかである場合は含まれません。
(例)
・当該事業場の中心となる重要な建物、設備、機械等 が焼失を免れ、多少の労働者を解雇すれば従来通り 操業することができる場合
・従来の事業は廃止するが、多少の労働者を解雇すれ ばそのまま別個の事業に転換することができる場合
3.顛末
水害が特にひどかった西枇杷島地域では、事業継続不可能を理由に、多数の会社が解雇予告の除外認定を受けました。本来なら会社ごとに労働基準監督署が審査し、その上で認定をすべきですが、今回の西枇杷島地域に関しては、阪神大震災の時と同様、市町村が発行する被災証明書をもって認定するというものでした。
しかし、これは再建が必ずしも不可能ではない会社についても、被災証明書があれば認定しているため、労働者が不当解雇を訴えた場合、会社が敗れる危険性をはらんでいます。
A社社長は顧問社会保険労務士に相談したところ、A社の労使関係が以前からうまくいっていない点と、A社の資産状況から判断すると事業の継続は不可能ではない点を指摘され、今回の申請は諦めるようアドバイスを受けました。A社社長はやむなく平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払って社員全員を即時解雇し、会社精算を始めました。