2006年11月17日

083.間違いやすい再雇用者の有休

■はじめに                
少子高齢化の進展や年金支給開始年齢引き上げ等の状況の中、高齢者が活躍できる労働市場の整備が必要という観点から、改正高年齢者雇用安定法が平成18年4月1日から施行されました。
これにより企業には、「①定年の引上げ②継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)の導入③定年の定めの廃止」のいずれかの措置を講じ、段階的に65歳までの雇用を確保することが義務づけられました。

■再雇用制度               
現在、多くの企業で同法改正の対応を進め、その中でも上記②継続雇用制度のうちのひとつである再雇用制度を導入する企業が、最も多いという調査結果が出ています。
再雇用制度とは、定年に達したことにより、今までの労働契約を終了させ、その後に新たな労働契約を締結するという制度です。
労働契約終了とは、いったん退職という形になりますので、退職金に関しても、一般的にはその時点で支給となります。
また、新たに締結する労働契約の身分は、嘱託社員、契約社員、パート、アルバイトなど多岐にわたり、賃金についても定年前より大幅に下がることがほとんどです。身分が非正規社員になることで、職責も軽減されるのが一般的です。
そんな再雇用制度を導入している企業で、定年退職後の再雇用者の年次有給休暇について、実際、取扱いを間違えている企業が多く見受けられます。
制度を導入する企業にとって、年次有給休暇の取扱いには、正しい理解が必要です。

■法的解釈                
再雇用制度では、今までの関係が一旦終了となり、新しい条件で契約をし直します。
そのため、年次有給休暇についても、定年前の勤続年数、定年時に有する残日数はいったんリセットされ、取扱いは新規採用者と同様、6ヶ月間は付与されないと思われがちですが、これは間違いです。
勤続年数について労働基準法では次のような行政解釈が示されています。
「継続勤務とは在職期間をさし、勤続の実態に即し実質的に判断するべきものであり、定年退職後の嘱託勤務等でその実質よりみて引き続き使用されているものと認められる場合には、勤務年数を通算する。」(S63.3.14基発第150号通達)
つまり、定年退職者の再雇用は、単に企業内における身分の切替えであって、実質的には労働関係が継続しているものと考えられています。実態で判断されるので、退職金が定年時に清算支給されていたとしても関係はありません。
上記のことから、定年退職者を引き続き再雇用した場合には、年次有給休暇の付与日数に係る勤続年数は通算されることになります。
また、労働者に既に生じている年次有給休暇の権利は、労働基準法で定める時効(付与日数から2年間)により権利が消滅しない限り、労働関係が継続している間は存続するとされていますので、定年前に付与した年次有給休暇の残日数についても、再雇用後に繰り越すことになります。

■有休の取扱い              
再雇用により賃金等の契約内容は変わりますが、有休を付与する際の8割以上の出勤率を判断する場合は継続しているものと考え、その付与日数も定年前からの勤続年数によって加算された付与日数となります。
したがって、実務的には特に異なった取扱いはなく、勤続年数による付与日数は、通常に継続して勤務していた場合と同じ取扱いとなり、残日数に関しても通常通りの繰り越しとなります。
ただし、定年退職してから2ヶ月以上相当期間経ってから再雇用するなど、客観的に労働関係の断続が認められる場合は、勤続年数の通算も残日数の繰り越しも必要はありません。
また、再雇用の勤務形態で多い、パートなどの短時間労働者として再雇用した場合でも、再雇用後の最初の基準日が来るまでは、定年退職前から付与されている年次有給休暇の残日数を、そのまま継続して使用消化していかなければなりません。

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082.パート社員の待遇

■パート社員の待遇                   
 パート社員(1週間の所定労働時間が正社員よりも短い者)は、04年度に初めて一千万人を上回り、就業者に占める比率も25%を突破しました。労働時間が正社員の4分の3に満たないと社会保険に加入する義務が生じない等、企業側にとっては雇用コストを抑えながら労働力を確保することができ、また働く側にとっても雇用条件が柔軟なため時間の調整が容易という利点があり、この雇用形態が促進したものと思われます。
 では、良いことばかりで今後何も対策を要せず、このままパート社員を雇用し続けていけるのでしょうか。

■パート社員の賃金格差                    
前述の通りパート社員とは、1週間の所定労働時間が正社員よりも短い者を指します。ところが、労働時間や業務内容が正社員と何ら変わらないパート社員もいます。このパート社員のことを「常用パート(擬似パート)」といいます。これらの常用パートの賃金についてパート労働法では、「通常の労働者との均衡を考慮すべき」として基本的には正社員と同じか、正社員に準じて決められるべきとしていますが、努力義務に過ぎず、強行規定ではありません。従って労働時間も業務内容も同じパート社員と正社員との賃金格差は直ちに違法としないことになります。しかし、平成8年にパート社員と正社員との賃金格差を民法90条「公序良俗違反」(法律では禁止されていないが社会的妥当性を欠く行為)とした「丸子警報器事件」(長野地方裁判上田支部)の判例が出ました。この判決は、「労働時間、業務内容が正社員と変わらないパート社員の賃金が比較対象となる正社員の賃金の8割を下回る場合は、公序良俗に反して違法である」としたもので、正社員の賃金の8割とパート社員28名が受けていた賃金の差額を、不法行為の損害賠償として、使用者に対し支払命令を出したものです。言い換えれば、2割以内の賃金格差は使用者の適法な裁量の範囲内ということを明確にしたことになります。
かつて昭和41年に女性の結婚退職制を憲法14条(国民は平等であり、差別されない)の趣旨と民法の公序良俗に反して無効とした判決から、男女雇用機会均等法が施行されるまで20年かかりました。パート社員の賃金差別を禁止する立法も丸子警報器事件から20年かかるのでしょうか。判決から10年経った今、パート社員を取り巻く法律の改正、立法が注目されています。

■パート社員を取り巻く法改正                    
社会保険の強制加入は、現在、正社員の労働時間の4分の3以上働くパート社員に加入義務がありますが、この要件を2分の1とするパート社員への加入拡大案が国会で審議されました。04年、産業界の猛反対により一旦見送られた形になりましたが、この見送りは廃案となった訳ではなく、見方を変えれば予告準備期間を設けた形にすぎません。この問題は08年以降に議論が再燃されそうです。
また、新しい動きとして、厚生労働省は、パート社員が事前の契約より長く働いた場合、法定労働時間以内(1日8時間、週40時間)でも所定労働時間を超えた部分を残業と位置づけて割増賃金の支払を義務付ける制度の検討に入りました。現在、労働基準法は週40時間(1日8時間)の法定労働時間を超えると25%から50%の割増賃金を支払うことを義務付けていることはご周知の通りです。パート社員に対しても、法定労働時間を超えない限り割増賃金を支払う必要はありませが、検討案では所定労働時間が4時間の契約のパート社員が8時間働いた場合、超過した4時間分の割増賃金の支払義務が発生します。割増率については、現在の下限である25%より低く設定する方向で5%から10%で調整される見通しです。この法案は本年すでに学識経験者等からなる審議会で議論が始まっており、07年の通常国会に新法案を提出し、08年からの導入を目指しています。
このように、パート社員を取り巻く雇用環境は激変しつつあり、法改正よってパート社員の労務管理が複雑になることが予測される中、企業は新たなパート社員の活用法を考えていかなくてはなりません。

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2006年11月14日

068.会社にとっての就業規則

■就業規則について考える                   
 「就業規則」と聞いて、会社の方はどのようなものを連想するでしょうか。「有給休暇の日数や育児・介護休業の取得、休業手当等、従業員に知られたくない権利を何でわざわざ明文化して教えなくちゃならないんだ。」とか、「ウチは俺が法律だ。だからそんなもの必要ない。」と思われる経営者は少なくないかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか。就業規則は、従業員の権利ばかりが主張され、会社には百害あって一利なしというものなのでしょうか。
 雇用形態が複雑化している近年、就業規則がなくとも従業員は自分の身を守るために積極的に情報交換をし、法律を学んでいます。従って、もはや「従業員に知られたくない権利」というものは皆無に等しいと言っても過言ではありません。
では、会社はどうすれば良いのでしょうか。それにはまず、就業規則の法的性質を知り、どのように活用するのかを考えなければなりません。

■就業規則の法的性質                   
就業規則の位置づけは、労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める部分については無効となり、その無効となった部分は労働基準法に定める基準によることになります(労基法13条)。よって、有給休暇の法改正があった後で、法改正前の付与日数しか与えていないというのは通用しません。
その一方で、就業規則は労働条件を法的に決定するために重要な役割も持っています。従業員側から見れば、自分たちの法的権利や待遇が定められ、会社にとっては、職場の秩序を保つために必要な労働条件と服務規律という重要事項を自ら決定できる重要文章になります。また、懲戒解雇事由については、就業規則に定めがないと、従業員に経営秩序侵害となる行為があっても、会社は懲戒解雇にすることはできません(懲戒事由の限定列挙)。過去の裁判例を見ても、従業員側に非があり、法的な手続きを踏んで解雇をしても、就業規則自体が作成されていなかったり、就業規則はあるが、その懲戒事由についての根拠条文がないばかりに会社が敗訴したケースが多く見られます。

■民法からみた就業規則                   
民法第92条には、はっきりと決まっているわけではない、または明文化したくないといった理由で就業規則に記載していない事柄、あるいは事実と違うことが就業規則に記載されているような場合、実際の争いごと(民事訴訟)で法規範性を有しているものとして、「事実たる慣習」というものがあります。これは、あくまで実態を見て判断するというのが現在の民事裁判、労働基準監督署の見解であり、就業規則と同じ効力を発揮します。この「事実たる慣習」のポイントは、①ある事実上の取扱いや制度と思われるものが、②反復継続して行われており、特別なことがなければそれによるという形で定着化し、③その取扱いや制度を従業員が認識(承知)しており、④就業規則の制定変更権を有する会社側が明示または黙認しており、⑤労使ともそれに従って処理・処遇をしており、事実上のルール化(規範化)している場合に成立します。
皆さんの会社には就業規則の有無を問わず、現在の経営状況とかみ合わないこのようなルールはありませんか。

■会社にとっての就業規則                    
このように、就業規則は職場で起こる様々な事に対して根拠付け、明文化し、従業員と会社及び、従業員と従業員との相互関係を円滑にする役割を持っています。
労働基準法は、従業員の権利を保護するために法律化したものですが、就業規則は、その権利を踏まえ、労働基準法に定めのない服務規律や懲戒事由といった職場の秩序を保つために必要な従業員の義務を盛り込んで作成されるものです。
就業規則を「厄介なもの」として扱うのではなく、それぞれの会社にあった就業規則を、従業員に対して会社のメッセージを込めて作り込み、運用することが、将来的に会社を守り、発展させることに繋がります。

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067.社員の健康管理と会社の責任

■過労死の認定基準とは          
 近年、過労死・過労自殺などの労災認定の増加により、職場における健康管理問題がクローズアップされてきています。
過労死の認定基準は、昭和62年10月の「脳・心臓疾患の認定基準」により、初めて過重負荷の考えが採用され、脳・心臓疾患の発症前1週間の業務の過重性を評価するものと定められましたが、発症前1週間では評価期間が短すぎる、疲労の蓄積を評価すべきである、過重である評価が高すぎるなどの批判が相次ぎました。
そのため、平成13年12月に、発症前6ヶ月にわたって1ヶ月あたり45時間を超える時間外労働が認められる場合、長くなるほど業務との関連性が徐々に強まり、発症前1ヶ月間に80時間を超える時間外労働が認められる場合には、業務と発症の関連性が強いと評価される「脳・心臓疾患の新認定基準」が新たに定められました。

■会社の健康管理責任           
しかし、新たな認定基準が定められても、過労死や過労自殺、仕事上のストレスによる0精神障害の労災認定も急激に増加しているため、社員に対しての会社の管理責任がいっそう問われるようになりました。
会社に課せられている健康管理義務は、健康診断の実施とされていますが、実施すればよいというわけではありません。社員個人の健康状態を把握せず、適切な措置を講じず過労死等を発症した場合には、会社の安全配慮義務違反となり、労災補償だけにとどまらず、当然民事的な責任まで求められてしまいます。

■求められる会社の管理体制       
 身体的・精神的ストレスの耐性は社員により異なります。また、就業時間や就業形態も多様化している現代では、社員全体で捉えた健康管理では不十分です。
会社としてとるべき措置は、長時間労働を抑制し、心身の疲労回復がとれるよう休日の確保に努めることですが、社員それぞれに合わせた健康管理を行い、安心して働ける職場環境の提供ができなければ、過重労働の労働災害防止とはなりません。

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2006年11月08日

052.休日振替と代休について

■はじめに                
長引く不況による人員削減によって、最近は一人当たりの業務量が増大する過重労働が社会的な問題になっています。
このような問題の解決方法のひとつが、休日振替や代休を正しく理解し積極的に実行することです。

■休日振替とは              
 「休日振替」とは労働契約や就業規則などで休日として特定している日を、あらかじめ、他の労働日と予定されている日と交換して、休日を「労働日」に、他の労働日を「休日」にする措置をいいます。
このように本来の休日が変更され、「本来の休日」は「労働日」となり休日に労働させることにはなりませんから、休日労働に対する割増賃金の支払い義務はありません。

■代休とは                
 これに対して「代休」とは休日振替のように、事前に休日と他の労働日とを交換する措置を取らずに、実際に休日に労働させた後で、休日に働いた代償として適当な他の労働日を休日として与えることをいいます。
これは「休日」が変更されたわけではなく、たとえ後日休日を与えたとしても、実際に休日の日に労働させたわけですから実態は休日労働に変わりはなく、休日労働に対する割増賃金の支払い義務が生じますし、三六協定の締結も必要となります。しかし代休を与えること自体は労基法で義務づけられていません。

■休日振替と代休との分岐点                    
一般的には休日振替と代休は同じ意味のように使われがちですが、法律的解釈は別のものです。
この二つを区別するポイントは「代替日」をあらかじめ、定めているかどうかという点にあります。つまり、休日振替ではあらかじめ代替日が定められているのに対し、代休ではあらかじめ代替日が決まっておらず後日の適当な日に休みを取るということです。

■実施の効果               
前述のとおり、適法な手続きによって休日振替が行われた場合は、当該休日は労働日となり、休日に労働させることになりません。従って、休日労働のための三六協定や割増賃金の支払いは必要ではないことになります。また振替によって出勤日となった日に欠勤したときは、当然のことながら賃金減額の対象となります。
一方、事前に休日代替日を決めていない場合は、実際に休日に働いた割増賃金の支払い義務、三六協定締結義務があるだけで、休日出勤の後に代休を与えることは労基法上義務ではありません。つまり与えても与えなくてもいいのです。しかし、やはり1週1回、4週4日以上の休日の要件(労基法第35条)を満たしていなければ労基法違反となります。これは休日振替に関しても同様のことがいえますので注意が必要です。
以上のことから、両者の一番大きな違いは割増賃金のコストであり、この面から見ると、休日振替を正しく理解し、上手に活用することが会社の利益、経費削減に繋がるとも言えます。

■休日振替の実施要件           
 就業規則などによって特定された休日を他の労働日と適法に振替え、労働者に休日の振替えに応じる義務が生じるとするためには、次の要件をすべて満たす必要があります。
① 就業規則や労働協約などに休日振替の規定があること
② 休日振替を実施する事由を具体的に定めておくこと
③ 振替える日を事前に特定すること
④ 実施内容を事前に周知させていること
いずれにせよ、休日振替は労働者にとっても労働環境の改善向上となり、その実施のためには、事前に法的整備することが必要不可欠と思われます。
 法令遵守のための社内規定の整備改善、労使間の問題についてお困りでしたら、気軽にご相談ください。

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2006年11月07日

049.有期労働契約について

■はじめに                
雇用形態が多様化し、この1月に労働基準法も有期雇用期間の上限を1年から3年(特定のものは3年から5年)に改正されました。
今回は、最近ご相談が多い有期労働契約(期間雇用)について、お話ししたいと思います。

■有期契約の判断要素             
雇用形態には大きく分けて、期間の定めがない雇用(一般的に正社員)と、期間の定めがある雇用(期間雇用)があります。では、雇用契約書で期間さえ定めていれば、有期の労働契約と本当に認められるのでしょうか。
有期契約に該当するかどうかは、過去の裁判例から主に次の6項目に関して、当該契約関係の実態を見て判断されます。

① 業務の客観的内容
 従事する仕事の種類・内容・勤務の形態(業務内容の恒常性・臨時性、業務内容について正社員との同一性の有無等)
② 契約上の地位の性格
契約上の地位の基幹性・臨時性(例えば、嘱託、非常勤講師等は地位の臨時性が認められる。)、労働条件についての正社員との同一性の有無等
③ 当事者の主観的態様
継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無・程度等(採用に際しての雇用契約の期間や、更新ないし継続雇用の見込み等についての雇用主からの説明等)
④ 更新の手続・実態
契約更新の状況(反復更新の有無・回数、勤続年数等)、契約更新時における手続きの厳格性の程度(更新手続きの有無・時期・方法、更新の可否の判断方法等)
⑤ 他の労働者の更新状況
同様の地位にある他の労働者の雇い止めの有無等
⑥ その他
有期労働契約を締結した経緯、勤続年数・年齢等の上限の設定等

■相談事例を踏まえて           
有期契約社員の処遇等の相談をお受けするとき、前ページでもお話しいている解雇(雇い止め)に該当するかどうかがよく問題になります。通常、有期契約を結んでいれば、雇用期間の満了と共に雇用契約が解除され、何も問題はなく雇用関係が終了すると考えられますが、契約関係の実態をみて、相当程度の反復更新がなされている場合、次のことに留意する必要があります。
業務内容が臨時的なものでなく恒常的なものであること、更新の手続きが形式的であること、雇用の継続を期待させる使用者の言動が多く認められること、同様の地位の労働者の更新の状況について、これまでに雇い止めの例がほとんどないこと、などの事柄があると、その契約は実質的に期間の定めのない雇用と同一視され、契約期間の満了に際しても解雇の問題(その解雇が正当なものかどうか)が発生します。
今までは、このような問題も少なかったのですが、不況が長引く昨今、働く側の雇用に対する意識や関心もかなり高くなってきていますので、一つのことを疎かにしてしまったばかりに後々行政官庁に指摘され、思わぬコストと労力を裂かれるケースも少なくありません。 


■対策                   
対策としては、次のことが必要になります。

①雇用契約の締結時に雇い止めがあることの旨を定めること       
②期間満了前に実質的に更新の有無を検討すること
③更新の手続きを厳格に行うこと
④使用者と労働者がその都度しっかりと契約内容について確認し合うこと

また、期間の定めのない雇用と認定されないために、募集・採用手続き、教育研修、担当業務、就業規則、労働時間、その他の処遇について、正社員と明確に区分する必要があります。
雇用契約書の作成・見直し、契約更新に際しての手続きや手順についてご不明な点やお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

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2006年11月01日

041.労働時間を考える

「労働時間」とは、一般的な意味で使う場合もありますが、会社の中で使う場合は労働基準法が関係してくるため、まず初めに労働基準法でいう「労働時間」から考えてみたいと思います。
                   
労働基準法上の労働時間とは「労働者が使用者に労務を提供し使用者の現実かつ直接的な指揮命令に服している時間」をいいます。

では、労務の提供のために現実かつ直接的に指揮命令を受けている場合でも、いわゆる手待ち時間などのように実際に作業をしていなかったらどうでしょうか。この場合でも、たまたま作業をしていないだけであって、やはり労働時間になります。

逆に、休憩時間や始業・終業時刻の前後の自由時間などは、使用者の拘束下にある時間ではありますが、労務提供のための指揮命令は受けておらず、労働から解放されているため、労働時間になりません。


                 
ここで、もう少し詳しく労働時間と拘束時間を見ていきましょう。
まず、拘束時間は次の3つに分かれます。
①労働時間-使用者の直接的な指揮命令下で労務を提供している時間
②休憩時間-労働時間の途中で権利として労働から離れることを保障されている時間
③構内自由時間-労働時間の前後にある自由利用時間または出張中の乗車時間等

労働時間も次の3つに分かれます。
①実作業時間-現実の指揮命令下に実際に作業に従事している時間
②手待ち時間-現実の指揮命令(作業体制)下におかれ、就労のために待機している時間
③準備・整理期間-作業に必要不可欠な準備及び整理時間で、かつ使用者の指揮命令下にある時間

                    
労働基準法上の労働時間・拘束時間の概念以外に、会社では就業規則の中で会社の労働時間を定めています。就業規則は、個別の労働契約の中の共通的包括的な部分を定めた、一種の契約書です。労働基準法で定められた労働時間を「法定労働時間」というのに対し、就業規則の労働時間は、会社と労働者が同意の下に契約した労働時間という意味で「所定労働時間」と表現されているはずです。
 
会社は、労働基準法に反しない限り自由に労働時間を定めることができるため、大半の就業規則では、労働時間を、労働契約上労務提供を約束した契約労働時間をもって取り扱っています。従って、始業時刻から終業時刻までの形式的な意味の労働時間をもって就業規則上の労働時間としています。

                    
このように、労働時間にも労働基準法上の労働時間と就業規則上の労働時間があるように、労働時間の起算点・終了点にも「労働基準法上の起算点・終了点」と「就業規則上の起算点・終了点」があるということです。
 
労働基準法上の起算点は、労務提供のため使用者の指揮命令下に入ったと認められる時点から始まり、それから離脱する時点で終了します。
 
一方、就業規則上では、会社と社員が始業・終業時刻として労働契約上定めた労務提供義務の開始および終了時点をいいます。
 
たとえば、タイムカードを打刻してから、始業時刻になり実際の業務を開始するまでの間を自由に過ごすことができるとした場合、次の2通りが考えられます。
①就業規則に「始業時刻とはタイムレコーダーを打刻した時とする」とした場合、業務開始という実際の指揮命令下にいなくても、打刻時刻が労働時間の起算点となります。
②就業規則に「始業時刻10分前までにタイムカードを打刻すること」と両者を区別した場合は、打刻時刻でなく、始業時刻が労働時間の起算点となります。

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2006年10月31日

039.作業着等の着脱時間は労働時間か

1.平成12年3月、更衣時間等は労働時間であるとして賃金カットは無効とした高裁の判断を支持した判決が最高裁で出されました。(三菱重工業長崎造船所事件)
「作業着に着替える時間まで労働時間なのか」と驚かれるかも知れませんが、更衣時間は原則として従業員側の負担であり、労働時間ではありません。本来従業員は「作業に適する服装」で労務の提供をしなければ債務の本旨に従った提供とはいえないので、就業に不適当な服装で就労しようとしたとき、使用者は就労を拒否することができます。しかし、その時間が使用者の指揮監督下にあると認められる場合は労働時間になることがあります。

2.労働時間とは何か
そこで労働時間とは何かという問題ですが、労働基準法における労働時間は、以下のいずれの要件も満たす場合をいいます。
①従業員が使用者に対して労務を提供している時間であること
②使用者の指揮命令下にある時間であること
労働基準法は最低の労働条件を決めるものであり(同法第1条第2項)、①②の要件を満たしていれば必ず労働時間として取り扱い、賃金の支払いが必要となる反面、必ずしも①②の要件を満たしていなくても、それを会社において労働時間として取り扱う場合は、労働時間として賃金支払いの対象となります。
問題は、更衣時間や体操時間、入浴時間、清掃時間、構内歩行時間などを労働時間として取り扱わければならないのかということです。これらの問題は、性質上労働時間になるとは断定し得ない時間ですし、他方労働時間とは全く無関係ではなく、労働をするために必要な時間でもあります。一概にどちらとも決めることはできず、その会社のそれらの時間についての取り扱いが重要になります。その場合には、まさに「指揮命令下」にある時間か否かがポイントとなります。

3.裁判例の動向
裁判例を見ても、更衣時間を労働時間として取り扱うべきかという点については、判断が分かれています。
①日野自動車工業事件
  労働時間ではない(東京高裁:昭和56年7月)
②石川島播磨東二工場事件
  イ.労働時間ではない(第一審東京地裁:昭和52年8月)
  ロ.労働時間である(控訴審東京高裁:昭和59年10月)
③住友電工大阪製作所事件
 労働時間ではない(大阪地裁:昭和56年8月)
④三菱重工業長崎造船所事件(2件)
  a.労働時間ではない(長崎地裁:昭和60年6月)
  b.イ.労働時間である(長崎地裁:昭和62年11月)
  ロ.労働時間である(控訴審福岡高裁:平成7年3月)
ハ.労働時間である(上告審最高裁:平成12年3月)

4.判断基準
では、どのような場合が労働時間となるか。具体的な判断基準は次の通りです。
①会社の命令(就業規則その他の社則または慣行)として一定の時間に所定の更衣室において使用者の指揮命令を受けて更衣することが義務づけられ拘束されており(社外での着用禁止)、かつ服装についての点検がその場で行われているような場合。
②業務の性質上、作業服に着替えて作業しなければならないもので、服装管理を使用者が行っている場合(例えば、半導体の製造従事者でクリーンルームで作業する場合の作業着、ホテルのボーイ、ガードマン、車掌等職務の識別の明白性の要請によるもの、制服の警察官、制服の消防士等身分ないし責任の明白性等からの必要性のある場合等)であって、服装の管理も使用者の労務管理の一部となっており、その管理責任が使用者にあると認められる場合で必ず使用者の支配管理下で更衣すべき義務のあるというような場合。
③一般従業員と違って、その業務の性質上特殊な服装をしなければならない場合。たとえば、熱処理現場の耐熱服、商品等の宣伝用服装をしたマネキンガール等については、その服装の着用事態が業務となり必要的な作業準備行為となるので労働時間となる。また、法令上着用が義務づけられている服装等の場合にも内容や事情によるが原則として所定時間内で行うべきにもかかわらず任意に始業前に行ったような場合を除き労働時間となる。
上記のような業務上の必要性や義務性に加えて、使用者の直接的な指揮命令下で行うという拘束性のある場合を除き、一般的に更衣時間は労働時間として取り扱わなくても差し支えなく、前記の裁判例で労働時間ではないとの判決が出されたものについても、こういった見解を取っています。

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