2005年08月22日

010.会社にとっての就業規則

■就業規則について考える
 「就業規則」と聞いて、会社の方はどのようなものを連想するでしょうか。「有給休暇の日数や育児・介護休業の取得、休業手当等、従業員に知られたくない権利を何でわざわざ明文化して教えなくちゃならないんだ。」とか、「ウチは俺が法律だ。だからそんなもの必要ない。」と思われる経営者は少なくないかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか。就業規則は、従業員の権利ばかりが主張され、会社には百害あって一利なしというものなのでしょうか。
 雇用形態が複雑化している近年、就業規則がなくとも従業員は自分の身を守るために積極的に情報交換をし、法律を学んでいます。従って、もはや「従業員に知られたくない権利」というものは皆無に等しいと言っても過言ではありません。
では、会社はどうすれば良いのでしょうか。それにはまず、就業規則の法的性質を知り、どのように活用するのかを考えなければなりません。

■就業規則の法的性質
就業規則の位置づけは、労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める部分については無効となり、その無効となった部分は労働基準法に定める基準によることになります(労基法13条)。よって、有給休暇の法改正があった後で、法改正前の付与日数しか与えていないというのは通用しません。
その一方で、就業規則は労働条件を法的に決定するために重要な役割も持っています。従業員側から見れば、自分たちの法的権利や待遇が定められ、会社にとっては、職場の秩序を保つために必要な労働条件と服務規律という重要事項を自ら決定できる重要文章になります。また、懲戒解雇事由については、就業規則に定めがないと、従業員に経営秩序侵害となる行為があっても、会社は懲戒解雇にすることはできません(懲戒事由の限定列挙)。過去の裁判例を見ても、従業員側に非があり、法的な手続きを踏んで解雇をしても、就業規則自体が作成されていなかったり、就業規則はあるが、その懲戒事由についての根拠条文がないばかりに会社が敗訴したケースが多く見られます。

■民法からみた就業規則
民法第92条には、はっきりと決まっているわけではない、または明文化したくないといった理由で就業規則に記載していない事柄、あるいは事実と違うことが就業規則に記載されているような場合、実際の争いごと(民事訴訟)で法規範性を有しているものとして、「事実たる慣習」というものがあります。これは、あくまで実態を見て判断するというのが現在の民事裁判、労働基準監督署の見解であり、就業規則と同じ効力を発揮します。この「事実たる慣習」のポイントは、①ある事実上の取扱いや制度と思われるものが、②反復継続して行われており、特別なことがなければそれによるという形で定着化し、③その取扱いや制度を従業員が認識(承知)しており、④就業規則の制定変更権を有する会社側が明示または黙認しており、⑤労使ともそれに従って処理・処遇をしており、事実上のルール化(規範化)している場合に成立します。
皆さんの会社には就業規則の有無を問わず、現在の経営状況とかみ合わないこのようなルールはありませんか。

■会社にとっての就業規則
このように、就業規則は職場で起こる様々な事に対して根拠付け、明文化し、従業員と会社及び、従業員と従業員との相互関係を円滑にする役割を持っています。
労働基準法は、従業員の権利を保護するために法律化したものですが、就業規則は、その権利を踏まえ、労働基準法に定めのない服務規律や懲戒事由といった職場の秩序を保つために必要な従業員の義務を盛り込んで作成されるものです。
就業規則を「厄介なもの」として扱うのではなく、それぞれの会社にあった就業規則を、従業員に対して会社のメッセージを込めて作り込み、運用することが、将来的に会社を守り、発展させることに繋がります。


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投稿者 somu99 | コメント (0) | 【総務

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