2006年10月31日
038.企画業務型裁量労働制導入への危惧
1.「過重労働」に警鐘
経済社会の構造変化や従業員の就業意識の変化が進む中で、活力ある経済社会を実現していくために、事業活動の中枢にある従業員が創造的な能力を充分に発揮し得る環境作りが必要となっています。従業員の側にも、自らの知識、技術や創造的な能力を活かし、仕事の進め方や時間配分に関し主体性を持って働きたいという意識が高まっています。
平成12年4月からは、仕事のやり方や労働時間の配分を本人に任せることをホワイトカラーに広く適用することにした新しい裁量労働制「企画業務型裁量労働制」が労働基準法で認められています。しかし、この制度は過労の責任が本人に押しつけられることになりかねないという懸念の声もあり、導入にあたっては労使で充分に検討する必要があるといえます。
2.「企画業務型裁量労働制」を導入できる事業場とは
「企画業務型裁量労働制」を導入できる事業場とは、事業運営上の重要な決定が行われる事業場で、具体的には以下のところが該当します。
①本社である事業場
②上記①のほか、企業・法人の事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われている事業場(一部の「事業本部」や「支社・支店」である事業場)
3.労使委員会で何を決めればよいか
労使委員会では、以下の①~⑧の事項について委員全員の合意により決議することが必要です。
①対象となる業務の具体的な範囲
②対象従業員の具体的な範囲
③労働したものとみなす時間
④使用者が対象となる従業員の勤務状況に応じて実施する健康及び福祉を確保するための措置の具体的内容
⑤使用者が対象となる従業員からの苦情の処理のために実施する措置の具体的内容
⑥本制度の適用について従業員本人の同意を得なければならないこと(就業規則による包括的同意は不可)及び不同意の従業員に対し不利益取扱いをしてはならないこと
⑦決議の有効期間(当分の間1年以内に限る)
⑧「企画業務型裁量労働制」の実施状況に関する記録を保存すること
4.訴訟例から-電通過労自殺訴訟
過労自殺について次のような判決がありました。
『平成3年年8月に自殺した大手広告代理店「電通」の社員だった大嶋一郎さん(当時24歳)の両親が、「長時間労働による過労でうつ病になったことが原因だ」として、電通に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が平成12年3月24日、最高裁であった。裁判長は「会社側には大嶋さんの長時間労働と健康状態の悪化を認識しながら、負担軽減の措置を取らなかった過失がある」と電通側の責任を認定。一審より損害賠償額を減額した二審・東京高裁判決の遺族側敗訴部分を破棄し、審理を同高裁に差し戻した。
長時間労働と自殺との因果関係、会社の責任を明確に認めた初の最高裁判決で、差し戻し審では賠償額を増額する方向で審理される見通し。判決は「会社には、業務遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して従業員の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務がある」との初判断を示しており、同様の訴訟や企業の労務管理のあり方に大きな影響を与えるようだ。』
電通のような広告代理業は、以前から労働基準法により認められていた「専門業務型裁量労働制」を適用でき、会社側も「労働時間の配分は社員の自己判断のもとに行われる」として責任を免れようとしていたようです。
5.裁量労働制を導入するにあたっての注意点
裁量労働制を「時間外労働のコストを削減する方策の1つ」として採用している会社も少なくありません。しかし、先の訴訟で電通側の主張が一切認められなかったように、裁量労働制といえども会社が責任を追及される場合があります。
新裁量労働制を検討する場合は、制度の趣旨および内容を充分に理解し、労使委員会で話し合い、適切な労務管理及び健康管理体制を整えた上で導入する必要があります。
なお、この制度を導入しても、休憩・法定休日・深夜業の割増賃金の規定は原則通り適用されます。
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