2006年11月08日
053.成果の出なかった成果主義
成果主義という言葉を聞くようになって久しく、今では、その失敗例を多く耳にするようになりました。
今後、成果主義を何らかの形で自社に導入していく中で、過去に他社が経験した「成果の出なかった成果主義」を学ぶことは、時間短縮かつ成功確率を高めることになります。
日本で使われている「成果主義」と言われるものは、一般的に「成果主義給与制度」を指します。
昨今、遅ればせながら中小企業が成果主義給与制度導入を考える背景には、おおむね次の二つに集約することができます。
①会社の業績が悪化したので、社員全員の給与を一律にカットしたいが、年齢や勤続年数により給与を決定する年功主義給与制度や、職務遂行能力や保有能力により給与を決定する能力主義給与制度では、制度上難しいので、業績や結果に対する責任を社員に取らせて(つまり「減給」して)、総額人件費を会社業績連動型にして、結果的に、会社の財務状況的に負担に耐えうる総額人件費に抑える。
②会社の業績が悪化し、高度経済成長下で運用して来た年功主義・能力主義の中に隠れていた採算の悪い社員(つまり給与分の働きをしない社員)が目につくようになり、働きに見合った給与に減額しつつ、その減額分を原資に、給与以上の働きをする社員を昇給させる。言い換えると、働きに応じて給与を払い、ある種公平な処遇をして、優秀人材のモチベーションを維持またはアップさせ、社外流出(退職)を防ぐ。
他社の成果主義給与制度導入後に出て来た問題点を整理すると、次のようになります。
①保険のセールスや自動車の営業など、個人の成果がデータとして客観的に把握しやすい一部の業務を除くと、ほとんどの業務は「成果」を客観的に把握することが困難である。また、保険セールスや自動車営業といえども、担当地域や顧客層によるところもあり、本人の資質や努力と必ずしも連動しないため、何をもって「成果」とするのか、定義づけが非常に困難である。
②「成果」の判定期間は一般的に1年としているため、新市場の開発や商品開発・研究開発といった1年以上にわたる取り組みを軽視する傾向がある。
③社員個人の「成果」を直接的に給与と連動させるため、組織やチームより個人成績に関心とエネルギーを集中させてしまう。
④業績や結果を評価し、プロセスや取組み姿勢を考慮しないため、特に若年層にいくほど「成果」の判断が難しくなり、成果主義が馴染まない。
⑤成果に見合った評価・給与を与えても、それまで当たり前でなかったこと(成果を出しても給与に反映されなかった)が当たり前になっただけで、もはやそれ以上のモチベーション向上にならない。
⑥導入後の管理者の評価に対する肉体的精神的負担が極度に増加する中で、鳴り物入りで導入した成果主義給与制度の成果が「ダメ社員の給与をアップさせない」証拠作りに終わってしまっている。
ここまで、日本で導入されてきた成果主義を振り返ると、「成果主義給与制度」の名で、成果主義を業績・結果に基づいて直接的に給与制度に連動させて、給与制度に閉じ込めてしまうことで、成果主義自体を狭い、こじんまりとしたものにしてしまったことが、今日の結果を招いてしまっている一番の原因であるといえます。
成果主義はあくまでも「人」という経営資源の投資効率を高めるための一つの手段です。その先にあるのは、企業の競争力を継続的に向上させ、企業が永続的に発展することです。何のための成果主義か。今一度考える意味は大きいと思います。
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